
暑い夏や寒い冬に快適な生活を送るために欠かせないエアコンですが、ある日突然、その吹き出し口や本体の裏から黒い物体が現れたらどうでしょうか。想像しただけでも背筋が凍るような恐怖を感じるかもしれません。エアコンのゴキブリはいったいどこから侵入してくるのでしょうか。自分だけの聖域であるはずの部屋に害虫が入り込む隙間があるとしたら、夜も安心して眠れませんよね。実はエアコンには構造上どうしても避けられないゴキブリの侵入経路がいくつか存在しています。この記事ではドレンホースや配管の穴といった外部からの侵入ルートを特定し、100均グッズを使った対策やアロマやハッカ油での予防が可能かどうか、さらには卵や幼虫を発見してしまった場合の駆除方法まで詳しく解説していきます。業者に依頼すべき危険なサインについても触れていますので、ぜひ最後までお読みください。
- 室外機のドレンホースや壁の配管穴など主要な侵入経路の特定
- 100均グッズやパテを使用した具体的で効果的な物理的封鎖方法
- スプレー薬剤の使用リスクと安全に駆除するための毒餌剤活用法
- エアコン内部が巣になってしまった場合の対処とプロによる洗浄
エアコンのゴキブリはどこから侵入するのか

私たちが普段何気なく使っているエアコンですが、実は家の中で最も「外と中が繋がっている」家電製品の一つであることをご存知でしょうか。壁に設置されている室内機と、ベランダや庭に置かれている室外機は、太い配管とホースで物理的に接続されています。つまり、この繋がりの中にわずかでも隙間があれば、それはゴキブリにとって「どうぞお入りください」と言われているような専用のゲートになってしまうのです。ここでは、なぜエアコンが彼らの侵入経路として選ばれてしまうのか、その物理的な構造と劣化による隙間の発生メカニズムについて、一つずつ丁寧に紐解いていきます。敵を知るには、まずその通り道を知ることが先決です。
室外機のドレンホースは最大の侵入ルート
エアコンからのゴキブリ侵入経路として、最も確率が高く、かつ最も無防備になりがちなのが「ドレンホース」です。ドレンホースとは、エアコンが冷房や除湿運転をした際に発生する結露水(ドレン水)を、室外へ排出するための蛇腹状のホースのことです。通常、室外機の近くにちょろちょろと水が出ているホースがあるのを見たことがあるかと思います。
このドレンホース、実は内径が14mmから16mm程度で作られていることが一般的です。私たち人間にとっては指一本入るか入らないかの細い管ですが、ゴキブリにとってはこれ以上ないほど快適な「高速道路」となります。大型のクロゴキブリであっても成虫の体長は30mm程度ですが、彼らは体を平たくして狭い場所を通り抜ける達人ですので、14mmの穴があれば余裕を持って侵入できてしまいます。ましてや、チャバネゴキブリのような小型種や、孵化したばかりの幼虫であれば、何ら抵抗なくスルスルと登ってくることができるのです。
なぜドレンホースが選ばれるのか? ゴキブリは「暗い場所」「狭い場所」「湿気のある場所」を好みます。ドレンホースの中は常に排水で湿っており、光が届かない暗闇です。さらに、室内から排出されたホコリやカビがホース内に付着してヘドロ状になり、それが彼らを誘引する臭いを発していることもあります。つまり、ドレンホースは単なる穴ではなく、彼らにとって魅力的な環境が整ったアプローチロードなのです。
特に危険なのが、ドレンホースの先端が地面やベランダの床に直接ついているケースです。施工時には地面から浮かせて設置されることが多いですが、経年劣化でホースが伸びたり、固定具が外れたりして地面に垂れ下がってしまうことがあります。こうなると、地面を徘徊しているゴキブリが迷うことなくホースの入り口を見つけ、内部へと侵入を開始します。また、ホースの先端が排水溝や側溝の近くにある場合も要注意です。湿気を好むゴキブリの生息エリアと直結しているようなものだからです。
「まさかこんな細い管を、わざわざ数メートルも登ってくるの?」と思われるかもしれませんが、彼らの登坂能力を甘く見てはいけません。ホース内部の蛇腹構造は足場として最適であり、垂直に近い角度でも難なく登り切ります。そしてホースを登りきった先には、エアコン室内機のドレンパン(水受け皿)という、水と汚れが溜まったオアシスが待っているのです。ここから室内機内部の隙間を通って、最終的に部屋の中へと姿を現すことになります。
壁の穴とパテの劣化による隙間に注意
ドレンホースと並んで注意が必要なのが、エアコンの配管を外に通すための壁の穴、専門用語で「スリーブ穴」と呼ばれる部分です。エアコンを設置する際、室内機と室外機を繋ぐ冷媒管、ドレンホース、電気ケーブルなどをひとまとめにして壁の穴を通します。このとき、配管と壁の穴の隙間を埋めるために使われるのが「エアコン用パテ」と呼ばれる粘土のような充填材です。
新築時やエアコン設置直後は、このパテがしっかりと隙間を埋めているため、虫の侵入を許すことはありません。しかし、パテはあくまで粘土のような素材であり、恒久的なものではないのです。直射日光や雨風、気温の変化にさらされ続けることで、徐々に硬化し、収縮していきます。私の経験上、設置から5年から7年も経過すれば、多くのパテはカチカチに固まり、ひび割れを起こしたり、壁との間に隙間ができたりしてしまいます。
たとえ数ミリメートルの隙間であっても、ゴキブリにとっては十分な入り口です。彼らの体は非常に柔軟で、扁平な形状をしているため、驚くほど狭い隙間をすり抜けることができます。特に外壁側のパテが劣化して脱落していると、そこから壁の内部(壁内空間)へと侵入されます。壁の中は断熱材などがあり、彼らにとって居心地の良い空間になり得ます。そして、壁の中を伝って室内側のスリーブ穴に到達し、もし室内側のパテ処理も甘ければ、そこから室内機と壁の隙間を通って部屋の中に現れるのです。
室内機の裏から出てくる恐怖 「エアコンの風が出てくるところではなく、エアコンと壁の間からゴキブリが出てきた」という話をよく聞きますが、これはスリーブ穴の隙間から侵入した典型的なパターンです。室内からはエアコン本体に隠れて見えない場所なので、気づかないうちに侵入経路となっていることが多いのです。
また、地震や建物の微細な振動によってパテに亀裂が入ることもあります。定期的にベランダに出て、配管周りのパテがひび割れていないか、剥がれ落ちていないかを目視で確認することが大切です。指で押してみて弾力がなく、ボロボロと崩れるようであれば、既にその防御壁は機能していないと考えたほうがよいでしょう。
マンションの隠蔽配管に潜むリスクとは
最近のマンションやアパート、特におしゃれなデザイナーズ物件などでよく見られるのが「隠蔽配管(いんぺいはいかん)」という設置方法です。これは、建物の美観を損なわないように、エアコンの配管を壁の中や天井裏に通して見えないようにする施工方法のことです。見た目はスッキリして非常に美しいのですが、ゴキブリ対策という観点から見ると、実は特有のリスクを抱えています。
隠蔽配管の場合、配管を通すためのスペース(パイプシャフトなど)が建物内部に設けられています。問題は、この配管スペースが各階を縦断して繋がっているケースがあることです。もし、同じマンションの下の階や隣の部屋でゴキブリが発生していた場合、彼らがこの配管スペースを伝って移動してくる可能性があるのです。つまり、自分の部屋をどれだけ清潔に保っていても、建物全体の構造的な繋がりから侵入を許してしまうリスクがあるということです。
さらに厄介なのが、隠蔽配管は壁の中で複雑に曲がりくねっていることが多く、後から隙間を確認したり埋めたりするのが難しいという点です。室内機を取り付ける際、壁から配管が出ている部分の処理が甘いと、壁の中の空間と室内が直結してしまいます。通常、配管カバーなどで隠されていますが、そのカバーの内側で壁の穴(スリーブ)と配管の間に隙間があると、そこが侵入経路になります。
「窓も閉め切っているのに、なぜかゴキブリが出る」というマンション居住者の方からの相談を受けることがありますが、調査してみるとこの隠蔽配管の隙間が原因だったというケースは少なくありません。特に、築年数が経過したマンションでは、建物自体の歪みやコンクリートの収縮により、見えない部分に隙間が生じていることもあります。隠蔽配管の物件にお住まいの方は、室内機側の配管出口付近に隙間がないか、一度カバーを外せる範囲で確認してみることをお勧めします。
窓やサッシの隙間から侵入するケース

エアコンそのものの欠陥ではありませんが、エアコン設置に関連して窓周りに隙間ができ、そこから侵入されるケースも非常に多いです。特に注意が必要なのが、「ウィンドウエアコン(窓用エアコン)」を使用している場合や、壁に穴を開けられない賃貸物件で「窓パネル」を使って配管を通している場合です。
窓用エアコンは、窓枠に専用の枠を取り付けて設置しますが、この構造上、どうしてもサッシとの間に微細な隙間が生じやすくなります。製品には隙間を埋めるための蛇腹(ジャバラ)やゴムパッキンが付属していますが、これらが経年劣化で硬化したり、亀裂が入ったりすると、そこが侵入経路になります。また、取り付け時の調整が甘く、窓枠とエアコン枠が完全に密着していないこともあります。
また、通常の壁掛けエアコンであっても、配管を外に出すために窓を少し開けた状態で固定し、隙間をパネルで塞ぐような施工をしている場合も同様のリスクがあります。さらに盲点なのが、「網戸」です。エアコンの設置とは直接関係ありませんが、夏場にエアコンを使わずに換気をする際、網戸とサッシの間に隙間ができていることがあります。例えば、網戸を完全に閉めきっておらず「中途半端な位置」にしていると、サッシのフレームと網戸のフレームが重ならず、虫が入れる隙間ができてしまうのです。
ゴキブリは光と臭いに引き寄せられる 夜間、室内の明かりや夕食の美味しそうな臭いは、外を徘徊するゴキブリを強力に誘引します。窓周りにわずかでも隙間があれば、彼らは敏感にそれを察知し、迷わず侵入してきます。侵入した後、彼らは本能的に「暗くて狭い場所」を探して逃げ込むため、結果として窓の近くにあるエアコンの裏側や内部に潜伏することになります。
ユーザーからすると「エアコンから出てきた」ように見えますが、実際には窓の隙間から入ってエアコンに隠れていただけ、というパターンも非常に多いのです。窓周りのパッキンや隙間テープの状態、網戸の建て付けなどは、エアコン対策とセットで必ずチェックすべきポイントです。
エアコン内部が巣になる原因と予兆
「侵入経路がある」ということ以上に恐ろしいのが、エアコン内部がゴキブリの「巣(コロニー)」になってしまうことです。なぜ、無機質な機械の中が彼らの住処になってしまうのでしょうか。それは、エアコン内部がゴキブリが生きていくために必要な「水」「餌」「隠れ家」の3大要素を完璧に満たしているからです。
1. 水分(Hydro-Attraction) ゴキブリは水がなければ生きていけません。エアコンは冷房や除湿を行うと、内部の熱交換器(アルミフィン)が結露し、大量の水が発生します。この水はドレンパンに溜まりますが、運転を停止した後も完全には乾かず、湿潤な環境が維持されます。これは乾燥に弱いゴキブリにとって、砂漠の中のオアシスのようなものです。
2. 豊富な餌(Nutritional Reservoir) エアコンは室内の空気を吸い込みます。その際、空気中に漂うホコリ、人間の皮脂、フケ、ペットの毛、料理の油煙などをフィルターや内部の部品に吸着させます。さらに、湿気によって内部にはカビやバクテリアが発生します。これらが混ざり合ったヘドロ状の汚れは、雑食性のゴキブリにとって栄養満点の「ご馳走」なのです。
3. 快適な温度と狭さ(Thermodynamics & Thigmotaxis) ゴキブリには「接触走性」といって、背中と腹部が何かに触れているような狭い隙間を好む習性があります。エアコン内部の部品の隙間は、まさにこの習性に合致します。また、電装基板周辺などは通電によって微弱な熱を持っており、冬場などは暖かく快適なシェルターとなります。
では、エアコンが巣になっている予兆(サイン)はあるのでしょうか。以下のような現象が見られたら、内部での営巣を疑う必要があります。
| 予兆サイン | 詳細な状況 |
|---|---|
| 黒い粒が落ちてくる | エアコンの下や吹き出し口付近に、1mm程度の黒い粒(ゴキブリの糞)が落ちている。 |
| カサカサ音がする | 運転していない静かな夜に、エアコン内部からカサカサという微かな音が聞こえる。 |
| 異臭がする | カビ臭さとは違う、油っぽい独特の不快な臭い(フェロモン臭)が風に乗ってくる。 |
| 幼虫を頻繁に見る | エアコン周辺で、チャバネゴキブリや黒い小さな幼虫を何度も目撃する。 |
これらのサインを見逃して放置すると、内部で繁殖が進み、エアコンをつけるたびにゴキブリが降ってくるという悪夢のような事態になりかねません。
卵や幼虫を見つけた時の対処法
もし、エアコンのフィルター掃除などをしている最中に、小豆のような形をした黒っぽいカプセル状のものを見つけたら、それはゴキブリの卵鞘(らんしょう)である可能性が高いです。卵鞘には数十匹分の卵が格納されており、硬い殻で守られています。また、米粒よりも小さな黒い虫や、茶色い筋のある小さな虫を見つけたら、それは孵化したばかりの幼虫です。
卵(卵鞘)を発見した場合、最も重要なのは「殺虫剤は効かない」という事実を知ることです。卵鞘の殻は非常に堅牢で、一般的な殺虫スプレーの薬剤を通しません。ですので、スプレーをかけて安心していてはいけません。見つけたら、必ずトイレットペーパーなどで包んで物理的に取り除き、トイレに流すか、ビニール袋に入れて密閉し、屋外のゴミ箱に捨てる必要があります。その際、恐怖心から掃除機で吸い取りたくなる気持ちはわかりますが、それは絶対にNGです。掃除機のダストボックスの中で孵化し、掃除機が新たな巣になってしまう危険性があるからです。
幼虫を見つけた場合は、近くに親がいる、あるいは既に内部で繁殖が始まっている証拠です。1匹見たらその裏には数十匹いると思え、という言葉は迷信ではなく、彼らの繁殖力を考えればあながち間違いではありません。幼虫は成虫よりもさらに小さな隙間に入り込むため、徹底的な駆除が必要です。
目に見える卵や幼虫を全て物理的に除去したとしても、熱交換器の奥深くやファンの裏側など、手の届かない場所にまだ残っている可能性があります。自分での対処に限界を感じたり、恐怖で手が出せない場合は、無理をせずプロの手を借りることを検討すべき段階に来ていると言えるでしょう。
エアコンのゴキブリはどこから防ぐ?対策法
ここまで、エアコンがいかにゴキブリにとって侵入しやすく、居心地の良い場所であるかを見てきました。不安に思われた方も多いでしょうが、ご安心ください。侵入経路がわかっているということは、そこを確実に塞げば侵入は防げるということです。ここからは、「エアコン ゴキブリ どこから」という検索意図を持つ皆様が今すぐに実践できる、具体的かつ効果的な対策方法をご紹介します。100均で手に入るアイテムから、本格的なプロの技まで、状況に合わせた防衛策を講じていきましょう。
100均グッズでできるドレンホース対策
まず最初に着手すべきは、最大の侵入経路であるドレンホースの対策です。ここはコストをかけずに、ダイソーやセリア、キャンドゥなどの100円ショップで手に入るアイテムで十分に対策可能です。
「防虫キャップ」の活用 最近の100円ショップでは、エアコンコーナーに「防虫キャップ」という専用商品が置かれています。これはドレンホースの先端に差し込むだけのプラスチック製のキャップで、排水用の穴がスリット状やメッシュ状になっており、水は通すが虫は通さないという構造になっています。
使い方は非常に簡単です。 ドレンホースの先端を確認する(14mmか16mmが一般的)。 防虫キャップを奥までしっかりと差し込む。 念のため、外れないようにビニールテープで固定する。
これだけで、物理的に大きなゴキブリの侵入をシャットアウトできます。ただし、注意点が一つあります。100均の防虫キャップは「全メーカー対応」と書かれていても、ホースの蛇腹形状によっては微妙にサイズが合わず、緩かったり隙間ができたりすることがあります。装着後に指で引っ張ってみて簡単に抜けないか確認し、隙間があるようならビニールテープを巻いて密着させてください。
水切りネットやストッキングでの代用 専用のキャップが手に入らない場合や、より細かい網目を希望する場合は、キッチンの排水口用「水切りネット」や、不要になった「ストッキング」を使う方法もあります。ホースの先端にネットを被せ、輪ゴムや結束バンドでしっかりと固定します。これなら小さな幼虫やアリなどの侵入も防げます。
【重要】定期的なメンテナンスが必須です 防虫キャップやネットをつけると、虫の侵入は防げますが、同時に「エアコン内部から排出されるホコリやヘドロ」も出口でせき止められてしまいます。これらが詰まると排水ができなくなり、水が逆流して室内機から水漏れ(ドレンパンのオーバーフロー)を引き起こす原因になります。特に夏場の冷房シーズンは、月に一度はホースの先端を見て、詰まっていないか確認し、汚れていれば掃除をする必要があります。「付けっぱなしで放置」は絶対に避けてください。
自分でできるパテ埋めで隙間を塞ぐ方法

次に、壁の配管穴(スリーブ穴)の隙間対策です。ここもホームセンターやネット通販で数百円程度で売られている「エアコン配管用パテ」を使えば、DIYで簡単に修復できます。特別な工具や技術は必要ありません。粘土遊びの要領で作業が可能です。
パテ埋めの手順 現状確認: 既存のパテがひび割れていたり、隙間が開いていたりしないか確認します。
古いパテの除去: 劣化して硬くなったパテは、再利用できないので思い切って剥がします。手でボロボロと取れるはずです。
新しいパテの準備: 購入した「不乾性パテ(固まらないタイプ)」を袋から出し、手でよく揉んで柔らかくします。
成形と充填: 配管と壁の隙間を埋めるように、パテを押し込んでいきます。重要なのは、表面を覆うだけでなく、隙間の奥までしっかりと充填することです。
仕上げ: 表面を平らにならし、配管と壁に密着させます。隙間が全くない状態になれば完成です。
この作業は、室外側(ベランダ側)だけでなく、できれば室内側でも行うと効果的です。室内側は配管カバーがかかっている場合が多いですが、カバーを外せるようなら確認してみてください。室内と室外の両方でパテ埋めを行う「二重防衛」にすることで、壁内からの侵入も、外部からの侵入も鉄壁にガードすることができます。
賃貸物件の場合、退去時に原状回復が求められることがありますが、エアコンパテの補修は建物の維持管理に必要な行為とみなされることが多く、またパテ自体は簡単に取り外せるため、基本的には問題になりません。ただし、不安な場合は管理会社に一言相談してから行うと安心でしょう。
スプレーは危険?正しい駆除方法を解説
いざゴキブリに遭遇したとき、多くの人が反射的に手に取るのが「殺虫スプレー」です。しかし、エアコンに向かって殺虫スプレーを噴射することは、非常に危険な行為であることを強く認識しておく必要があります。
なぜエアコンへのスプレー噴射がNGなのか 一般的な殺虫エアゾールには、LPガスなどの「可燃性ガス」が含まれています。エアコン内部にはファンモーターや電気回路があり、運転中や通電中は微小なスパーク(火花)が発生することがあります。そこに可燃性ガスが充満すると、引火して爆発や火災を引き起こす恐れがあるのです。実際に、エアコン掃除や駆除目的でスプレーを大量に噴射し、火災になった事例が報告されています。
また、殺虫剤に含まれる溶剤が、エアコンの樹脂部品(プラスチック)を溶かしたり、変形させたりすることもあります。これを「ケミカルクラック」と呼びます。樹脂が割れると、水漏れの原因になったり、ファンが破損して飛び出してきたりする危険性があります。さらに、薬剤が精密な電子基板に付着すると、ショートして故障の原因になります。
正しい駆除方法 エアコン周辺や表面にいるゴキブリに対しては、殺虫成分を含まない「冷却スプレー(凍結スプレー)」がおすすめです。これなら引火のリスクや化学的な残留成分を気にせず使用できます(ただし、これも電装部への直接噴射は避けてください)。
もし内部に逃げ込まれてしまった場合は、無理にスプレーを吹きかけるのではなく、エアコンの電源を切り、出口付近に粘着シート(ゴキブリホイホイなど)を設置して出てくるのを待つか、後述する毒餌剤を使って誘い出す作戦に切り替えましょう。焦ってスプレーを撒くことが、最もリスクの高い行動です。
ブラックキャップ等の毒餌剤が効果的
エアコン内部に潜む、あるいはエアコンを経由して侵入しようとするゴキブリに対して、最も安全かつ壊滅的なダメージを与えられるのが「毒餌剤(ベイト剤)」です。有名な商品で言えば「ブラックキャップ」や「コンバット」などがこれに当たります。
戦略的な設置場所(The Siege Method) 毒餌剤は、ただ漫然と床に置くのではなく、ゴキブリの動線を予測してピンポイントに設置することで効果を最大化できます。
| 設置エリア | 具体的なポイント | 狙い |
|---|---|---|
| 室外機周辺 | 室外機の裏側、下、ドレンホースの出口付近 | 外部から近づく個体をその場で食い止め、巣に持ち帰らせて駆除する。 |
| 室内機周辺 | エアコンの上(天面)、エアコンの直下の家具の上、カーテンレールの上 | 内部から出てきた個体に即座に餌を食べさせ、内部に戻ってからコロニーごと駆除する。 |
| 配管ルート | 配管が通っている壁際、スリーブ穴の近く | 移動中の個体を狙い撃ちにする。 |
毒餌剤の優れた点は、食べた本人が死ぬだけでなく、その死骸やフンを食べた仲間のゴキブリも連鎖的に駆除できる「ドミノ効果」にあります。エアコン内部が巣になっている場合でも、餌を食べた個体が巣に戻って死ぬことで、内部の幼虫や他の成虫を一網打尽にできる可能性があります。スプレーのように即効性はありませんが、数日から数週間かけてじわじわと、しかし確実に個体数を減らしていくことができます。エアコンの故障リスクもゼロであり、最も推奨される駆除戦略です。
業者によるエアコンクリーニングの必要性

ここまで紹介した対策を行ってもゴキブリがいなくならない場合、あるいはエアコンをつけると異臭がする、黒い粒が降ってくるといった症状がある場合は、残念ながら素人の手に負えるレベルを超えている可能性があります。エアコン内部の奥深く、分解しなければ届かない場所に巣が形成され、卵が産み付けられている恐れがあります。
この段階に至ったら、プロの専門業者による「エアコン完全分解洗浄」を依頼することが、唯一にして最強の解決策となります。市販のエアコン洗浄スプレーなどは、熱交換器の表面を濡らす程度のもので、奥の汚れやゴキブリの巣まで洗い流す水圧も水量もありません。むしろ、中途半端に薬剤を残すことで、カビの栄養源になってしまうこともあります。
プロのクリーニングでは、高圧洗浄機を使って大量の水で内部を丸洗いします。ゴキブリの成虫はもちろん、卵、死骸、糞、そして彼らの餌となるカビやホコリを根こそぎ洗い流すことができます。まさに「リセット」です。依頼する際は、「ゴキブリが出たので徹底的にやってほしい」と正直に伝えることをお勧めします。業者によっては、防虫コーティングなどのオプションを提案してくれることもあります。
費用は1万円から2万円程度かかりますが、精神的な安寧と清潔な空気を取り戻せると考えれば、決して高い投資ではありません。年に一度、あるいは数年に一度の「大掃除」として、プロの技を借りることは非常に賢明な選択です。
エアコンのゴキブリはどこから入るか知り完封へ
エアコンとゴキブリの問題は、放置すればするほど状況が悪化し、私たちの生活空間を脅かす深刻なトラブルへと発展します。しかし、ここまで解説してきたように、彼らの侵入には必ず「物理的な理由」があります。魔法のように壁をすり抜けてくるわけではありません。ドレンホース、スリーブ穴の隙間、窓のサッシなど、具体的な侵入ルートが存在し、それぞれに対して適切な封鎖方法があります。
まずは今日、明るいうちに室外機の周りを見てみてください。ドレンホースが地面に着いていないか、パテが割れていないかを確認するだけでも、大きな第一歩です。そして、100均でキャップを買い、パテを埋め直し、ブラックキャップを設置する。これだけのことで、侵入リスクは激減します。
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」。エアコンという構造上の弱点を理解し、正しい知識とツールで対策を行えば、ゴキブリのいない快適で清潔な室内環境を取り戻すことは十分に可能です。この記事が、皆様の不安を解消し、安心して深呼吸できる部屋作りへの一助となれば幸いです。もし対策に迷ったり、状況が改善しない場合は、無理をせず専門業者に相談することも忘れないでくださいね。
まとめ:エアコンゴキブリ対策の決定版
- ドレンホースには必ず防虫キャップかネットを装着する(詰まりチェックも忘れずに!)。
- 配管穴のパテは消耗品。ひび割れがあればすぐに新しいパテで埋め直す。
- エアコンへの殺虫スプレー噴射は厳禁。毒餌剤(ベイト剤)で巣ごと駆除を狙う。
- 内部侵入の疑いがあるなら、プロの分解洗浄で完全リセットするのが最短ルート。